完全保存版　オバマ大統領再選勝利演説

【選挙戦解説】 沢田 博 (『ニューズウィーク』日本版元編集長)
【スピーチ分析】 野村 和宏 (神戸市外国語大学教授)

●オバマ大統領の「ことばの力」を聞く●
　激戦を制して２期目の当選を決めたオバマ大統領。多民族国家アメリカでは以心伝心とはいきません。夢、希望、理念を肉声で力強く表現できることばの力、国民に寄り添う気持ちをしっかりと伝える表現力が有権者の心をとらえるのです。本書はオバマが選ばれた要因を分析しながら、再選勝利演説をはじめとする４本のスピーチをCDに収録し、英文スクリプト、語注、対訳と解説で構成しています。1期目の業績と選挙戦を振り返るカラー口絵付き。

1.「オバマ大統領再選勝利演説」2012年11月7日(全文、肉声、20分38秒)
2.「ミシェル夫人民主党大会演説」2012年9月4日(抜粋、肉声、4分45秒)
3.「オバマ大統領候補指名受諾演説」2012年9月6日(全文、肉声、39分32秒)
4.「第３回TV討論会 オバマvsロムニー」2012年10月22日(抜粋、肉声、12分13秒)

地元シカゴ１万人の支持者を前にした再選勝利演説は、厳しい選挙戦の疲れをにじませながらも、４年前の熱狂とはまた違った感動を与えるものでした。より現実的な視座に立ちながら、「合衆国の最盛期はこれから訪れる」と訴えかけます。似た表現を効果的に繰り返したり、youとweを見事に使い分け、聴衆との一体感を高めていきます。

民主党大会のミシェル夫人のスピーチも実に堂々としたものでした。大統領以上ともいえる明確な発音、思いやりのある話し方が聴衆の感動を呼びました。オバマ大統領が、２日後の指名受諾演説を「何日か前、みなさんは私がどんなに幸運な男なのかをあらためて知ったことでしょう」ということばで始めたのは、ミシェル婦人のスピーチを受けてのことです。指名受諾演説は約40分の長さですが、省略しようにもカットするところがない完璧なスピーチです。短い文をたたみかけるように繰り返してアメリカの希望を描いてみせるクライマックスは圧巻です。

TV討論会では、丁々発止のやり取りの中で両候補とも高度なディベート技術を発揮しています。とりわけオバマ大統領が、原稿なしのフリートークでも聞きやすくわかりやすい見事な話し方をしているのが印象的です。